カノコ[備忘録]


あるブログで、カノコユリの話が出ていた。自分も好きな百合であり、当然といえば当然であるのだが何度か原種だというものを育てたのがうまくいかない。自分の亡くなった祖父が言うには、「百合は傾斜地に植えるもの」だと言っていたのを想いだす。

カノコといえばうちの家内は、絞りの鹿の子と栗鹿の子を思い浮かべるらしい。

カノコユリは、下記のように分けられるそうだ。
カノコユリ(Lilium speciosum Thunb.)
シマカノコユリ(Lilium speciosum Thunb. var. speciosum)
*ただし、シマカノコユリカノコユリを同一と書かれたものもある。
また、YListではシマカノコユリのsynonymとしてキカノコユリ(Lilium henryi Baker) との記載が見られる。ところが、キカノコユリは中国原産だという。さてさて。

キバナキカノコユリ(Lilium henryi Baker var. citrinum)キカノコユリの変種との記述あり。
タキユリ (Lilium speciosum Thunb. var. clivorum S.Abe et T.Tamura)
タイワンカノコユリ (Lilium speciosum Thunb. var. gloriosoides Baker)

タキユリは、日本では、四国山中および九州・佐世保湾入り口西彼杵(ニシソノギ)半島と佐世保湾の西に位置する九十九島に分布をするとされ、環境省絶滅危惧?類(VU)である。なお、高知県長崎県のみの分布ということであろが、徳島で写された画像も存在をする。徳島でも絶滅危惧種に入れるべきであると思うのだが、徳島県環境首都課HPでは、見つけられなかった。
http://www5.pref.tokushima.jp/kankyo/

シマカノコユリは、日本の九州西海岸および甑島に分布とされている。分布が限定とされることから絶滅危惧種から検索をしたのだが、見つからない? なぜだろうか?
http://www.pref.nagasaki.jp/sizen/2reddata/rdb2001/rdb2001pdf/15redlist.pdf

タイワンカノコユリは台湾および中国の安徽省 (あんきしょう)・浙江省(せっこうしょう)・江西省(こうせいしょう)での分布とされるのだが、中国でのタイワンユリは比較的タイワンに近い地域(省)での生育ということである。

ただし、漢名で鹿子百合と記載をされているものは、タイワンカノコユリをさすようである。
カノコユリの園芸品種で白花種をシラタマユリともよぶようである。

1695年(元禄7年~8年)の伊藤伊兵衛(三之丞)「花壇地錦抄」に、鹿子百合 末。花赤紫、黒紫ノ星有。花反リ返リテ咲ク也」「大百合 末。花形色、鹿子百合ニ少モ違ワズ、大輪。大鹿子共、江戸鹿子共言フ」
つまり、「鹿子百合ニ少モ違ワズ、大輪。大鹿子共、江戸鹿子共言フ」これから考えるにすでに江戸時代には、カノコユリの園芸種が作られていた言うことであろう。

なお息子、4代目・伊藤伊兵衛(政武)が、ソメイヨシノの育成者という説もある。

カノコユリ
環境省 絶滅危惧II類
徳島   絶滅危惧I類
福岡 情報不足
長崎 絶滅危惧IB類
鹿児島 準絶滅危惧
タキユリ
環境省 絶滅危惧II類
高知   絶滅危惧II類, 分布上高知県が重要な生育地になっている種
長崎 絶滅危惧II類

        カノコユリ園芸種(Lilium speciosum Thunb.)
カノコユリ園芸種(Lilium speciosum Thunb.) posted by (C)ドラ猫

シーボルト・コレクション

カノコユリ(Lilium speciosum Thunb.)
カノコユリ(Lilium speciosum Thunb.) posted by (C)ドラ猫


京都では、カノコソウといわずハルオミナエシもしくはオミナエシとよんでいたと思う。秋に咲くオミナエシは黄色で秋の七草でもあるのだが、そんなに多くは見かけた記憶はない。


案の定、絶滅危惧どころか絶滅寸前との記載である。ところがこれは聞くところによると戦前は、薬用(薬草)として主にヨーロッパに大量輸出をされていたという。外貨を稼ぐために採取され結果、絶滅危惧種とは、本末転倒といわざるをえない。

「春ノヲミナメシ 一名カノコサウ」である。もっとも小野蘭山が、京都出身故そのように書いたのか、それとも小野蘭山の時代には、一般的にカノコソウと言う名前より、ハルノオミナエシの方の呼び名が一般的であったのかは不明ではあるが、わざわざハルノオミナエシを先に記し、一名としていることからハルノオミナエシが一般的な呼び名であった可能性もある。ということで。



240 カノコソウ
240 カノコソウ posted by (C)ぶどう


青森 C 希少野生生物
岩手 DD 情報不足
秋田 CR 絶滅危惧IA類
山形 VU 絶滅危惧II類
福島 D 希少
神奈川 EX 絶滅
石川 VU 絶滅危惧II類
長野 EN 絶滅危惧IB類
岐阜 NT 準絶滅危惧
静岡 N3 要注目種(部会注目種)
三重 EX 絶滅
滋賀 DI 分布上重要種
京都 A 絶滅寸前種[京都]別名ハルオミナエシ
大阪 VU 絶滅危惧II類
奈良 VU 絶滅危惧種
島根 NT 準絶滅危惧
徳島 CE 絶滅危惧I類
愛媛 VU 絶滅危惧II類
長崎 VU 絶滅危惧II類[長崎]別名ハルオミナエシ
鹿児島 VU 絶滅危惧II類


今年、思いがけない場所で見つけたツルカノコソウである。わずか1株であったが、知りあいの園芸店に種子を預けた。はるか昔にはよく見かけた気がする。最近では、各地で絶滅危惧指定が始まっているようだ。もっとも神奈川では、いまだそこまでの心配は無いようにも思えるがとにかく少なくはなっている。しかし、茅ヶ崎市内で見かけたのは初めてである。
カノコソウは薬用として用いられたがツルカノコソウは、駄目なようである。

青森 重要希少野生生物
秋田 準絶滅危惧
埼玉 絶滅危惧II類
東京 生息環境の変化によりAランクやBランクへの移行が危惧される種
山梨 絶滅危惧II類
長野 絶滅危惧IB類
佐賀 準絶滅危惧
長崎 絶滅危惧IA類

ツルカノコソウ(Valeriana flaccidissima Maxim. )
ツルカノコソウ(Valeriana flaccidissima Maxim. ) posted by (C)ドラ猫



   ツルカノコソウ(Valeriana flaccidissima Maxim.)
ツルカノコソウ(Valeriana flaccidissima Maxim.) posted by (C)ドラ猫


シーボルト・コレクション

ツルカノコソウ(Valeriana flaccidissima Maxim.)
ツルカノコソウ(Valeriana flaccidissima Maxim.) posted by (C)ドラ猫


キョウガノコ(京鹿の子)という名前からのイメージだと京都の嵐山から桂の周辺ということになる。鹿の子は餡の小倉あんにもつながり嵐山・小倉山周辺となる。絞り染めの「京鹿の子」となると本来は、狭い地域でのものとなっていた。ちょうど右京区西京区ということになる(一部伏見でも)。今の西京区も以前は右京区であった。自分の長男が生まれる少し前に右京区から分かれて西京区となった。

染めの京鹿の子のことは日を改めれ書くこと事もあるだろう。
キョウガノコは、YListの生態情報では、栽培とされている。そうなると、元になる種は何であろうかということになる。(平凡社の「日本の野生植物」等からの情報のようだ)

福島県新潟県に自生をするコシジシモツケソウからの改良品種もしくはシモツケソウとの雑種説が、「跡見群芳園芸植物」の中で見かけたのだが、出典までは調べられなかった。 渓流へ釣りによく出かけていた関係で、山渓の本や図鑑はよく利用をするのだが、「山渓カラー名鑑」には「キョウガノコ」は山野で見られる」と記載をされていることから、コシジシモツケソウとキョウガノコは同じものなのだろうか。しかし、コシジシモツケソウには小さなトゲがあるという。

コシジシモツケソウを里に持ち帰り、改良をしたものがキョウガノコだという説はそのあたりからなのだろうか。

フォト蔵の画像の説明欄に自分は、キョウガノコにはトゲが無いと書いてある。これは栽培をしている方の言葉である。
コシジシモツケソウは、箱根湿性花園では栽培をされて入るのだが、神奈川では自生は見られないという。自分も一度、コシジシモツケソウの写真を写した記憶があるのだが、探しても見つからない。コシジシモツケソウに小さなトゲがあるものか確認をしたいと思ってはいる。しかし、限定された地域でしか生育がみられないコシジシモツケソウが絶滅危惧種に含まれていないことに違和感を覚える。

なお、白花品種をナツユキソウ(夏雪草)という。


     キョウガノコ(Filipendula x purpurea Maxim.)
キョウガノコ(Filipendula x purpurea Maxim.) posted by (C)ドラ猫





Centranthus macrosiphon Boiss.  ウスベニカノコソウ 標準 
Centranthus ruber (L.) DC.  ベニカノコソウ 標準 
Valeriana fauriei Briq.  カノコソウ 標準 
Valeriana fauriei Briq. f. albiflora Akasawa  シロバナカノコソウ 標準 
Valeriana flaccidissima Maxim.   ツルカノコソウ 標準 
Filipendula x purpurea Maxim.   キョウガノコ 標準 
Filipendula auriculata (Ohwi) Kitam.  コシジシモツケソウ 標準 
Filipendula auriculata (Ohwi) Kitam. f. chionea H.Ohba et S.Kato  シロバナコシジシモツケソウ 標準
Filipendula ulmaria (L.) Maxim.  セイヨウナツユキソウ 標準 
Filipendula x purpurea Maxim. f. albiflora (Makino) Ohwi  ナツユキソウ 標準 

米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList),http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html(2009年10月25日)