イワタバコ[今日の一輪]


タバコに似た葉をもつので「岩煙草」と名付けられたとされる。

イワタバコは、神奈川県内では、丹沢から箱根周辺で見られるがよく似たケイワタバコは、藤沢や鎌倉でも見られる。丹沢や箱根周辺では個体数が少なくなるようだ。

過去にケイワタバコは、江ノ島にも自生をしていたのだが、今はどうだろうか?

北鎌倉の東慶寺建長寺浄智寺に咲くイワタバコのニュースが毎年6月初旬の伝えられるのだが、自生のものならケイワタバコの可能性が非常に高いはずである。(はっきり言うとケイワタバコなのです)

仮に、イワタバコであったなら移植をされたものと考えるのが自然であろうか。
神奈川植物誌でも鎌倉でのイワタバコの自生は認められてはいないのである。

京都の美山・芦生原生林では、イワタバコとなる。
漢名を苦苣苔(くきょたい)といい、山菜としても知られている。味は山菜らしい味ということにしておこう。
地方名ではヤマジシャ(山萵苣)、イワジシャ(岩萵苣)、イワタカナ(岩高菜)、イワナ(岩菜)、タキジシャ(滝萵苣)などがある。

いつも感じるのだが、なぜ今まで生育をしていたものを増やそうとしないのだろうか?
「同じようなもので誤魔化す」という言い方は失礼に当たるのだろうが、どうも納得がいかない。
神奈川の河川でも酒匂川は、ヤマメとアマゴが混生する川であり、酒匂川以東はヤマメが生育をし、以西はアマゴが生育をする。今は無頓着な漁業組合が、釣れ易い種を加減な形で放流をしているのが実情である。

自分がよく出かけた京都の美山川(由良川源流)でも同じようなもので、一山京都市内寄りの上桂川が、本来ならアマゴの川で美山川がヤマメの川であった。
しかし、生育のしているはずもないアマゴを放流をしてしまっている。これは、釣り易いアマゴを放流した方が釣り客が増えるという単純な理屈からである。


イワタバコ(Conandron ramondioides Siebold et Zucc.)
イワタバコ(Conandron ramondioides Siebold et Zucc.) posted by (C)ドラ猫


ケイワタバコは、花茎や葉裏などに毛を密生している。花期が普通のイワタバコより約1ヶ月早いのが普通なのだが、イワタバコを鉢植えのした場合は、イワタバコもケイワタバコもさほど花期は変わらないことを考えると、ケイワタバコが低山・低地に多く見られ、イワタバコがケイワタバコより高地に生育をすることに起因するものと思われる。基部が左右非対称の葉を2枚以上見られ毛が疎生する程度ではケイワタバコとはよべないという。分布域は、千葉県南部から静岡県東部の太平洋側とされている。

過去に栽培をされたものであるが、桃色と白色のケイワタバコが売られていたが、どうも手を出す気にはなれなかったのを思い出す。

ケイワタバコ(Conandron ramondioides Siebold et Zucc. var. pilosus Makino)
ケイワタバコ(Conandron ramondioides Siebold et Zucc. var. pilosus Makino) posted by (C)ドラ猫

明確ではないが、ヤマジシャとよばれていることから、万葉集の「山萵苣 白露重 浦經 心深 吾戀不止」
「山ぢさの、白露重み、うらぶれて、心も深く、我が恋やまず」と柿本人麻呂が詠んでいる山萵苣が、このイワタバコではないかとされている。
山萵苣が、白露に濡れ重たく垂れるように、ションボリ項垂れながらも恋焦がれている訳で内容的にもは間違いはなさそうである。しかし萵苣は乳草からの訛化とされているためはっきり断定は出来ない。尚、乳草とは茎や葉を切った時に白い汁が出るものをさす。(ノゲシをさす場合もある)


Conandron ramondioides Siebold et Zucc.  イワタバコ 標準 
Conandron ramondioides Siebold et Zucc. f. leucanthus (Nakai) Okuyama  シロバナイワタバコ 標準 
Conandron ramondioides Siebold et Zucc. var. pilosus Makino  ケイワタバコ 標準 

米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList),http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html(2009年6月25日).